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ひととび文庫という、個人史を聞き取り、冊子にして贈るアートの制作を始めました。

第1回は、1932年生まれのM.Mさんのお話をうかがいました。
関東地方の商家で生まれ育ったMさんは、女学校に通っていたときに病気で父を亡くし、さらに戦争で兄を亡くし、母、姉、弟、義姉と子どもと一緒に生活していました。戦後は親戚の養子となって東京に暮らし、ある男性とお見合いをして結婚し、2人の子どもを産みます。以来、64年間、同じ家、同じ町に暮らしています。

お話の中でも特に戦時下、戦後、高度経済成長期を民間人、一人の生活者がどのように生きていたのかを、目の前で語られることは、私に大きな影響を与えました。特にこれを仕上げていたときは、ロシアのウクライナ侵攻が始まりました。自分の預かり知らないところで大きな動きが起こり、自分がそこに否応なく巻き込まれて、知ることはできても何もできないときだったので、この語りが見えない部分での支えになりました。

また、女性の生き方、家族の形についても注目すべき点は多く、今に連なる風俗、風習、価値観、社会背景が見えてきました。土地や地域の物語としても、個人の記憶にしか残らない何かを受け取れたことに、意味を感じています。

この冊子はMさんの90歳の誕生日である3月28日に贈りました。
ご本人にとっての記録でもあり、ご家族が自分たちのルーツを知る手がかりにもなればと願っています。

大きな歴史には残らない小さな声をこれからも少しずつ集め、小さく記録していけたらと思います。

インタビューは、2021年10月20日(水)に実施。
ブックデザインはぐるり舎の布留川真紀さんにお願いしました。
自主印刷、自主製本で2部のみ刷り、表紙はいせ辰の千代紙を使用。

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