鑑賞対話ファシリテーションとは

「対話」がある鑑賞

従来の鑑賞では、対象(作品)と自分との一対一の関係。観客(鑑賞者)は対象と個々の関係を結びます。
「対話」がある鑑賞では、個々の鑑賞体験を対話によってひらき、シェアすることを通して、対象と自分との関係を深めていきます。

 

鑑賞対話ファシリテーターが、対話を促進し、場の力で鑑賞体験を深めます。

  • 表現物(*)を観る、読む、聴く、作るなどした個人的体験を元に、対話を通して、多種多様な他者と知を分かち合うことや、表現物が内包している本質的テーマに迫る学びの体験が、参加者一人ひとりに起きるよう、促進する技能です。
  • プログラム時間内での円滑なコミュニケーションをはかる進行はもちろん、目的と対象者の美的発達段階 (**)と効果に応じた場を企画し、設計し、主催者と協働して場を運営する技能も持ちます。

  • ここでの対話は、自己理解や他者理解のための対話であり、場としての意見を集約することを目的とする合意形成のための対話ではありません。場としての成果や収穫の確認と共有は行いますが、結論を導き出すことが目的ではありません。
  • 鑑賞対話の場では、前提の共有のため、洞察や考察を深めるよい体験を得るために、知識や情報や技術がプログラムに組み込まれますが、それらの提供自体を目的とはしていません。
  • 政治・宗教・戦争・貧困・病・生殖・死・性・障害など、タブー視されがちなテーマも、アートを経由することで扱いやすくなることがあります。参加者の背景や学習段階、心理的負担も考慮しながら、表現作品を選定していきます。

*扱う表現物・表現形式の例

文芸(小説、詩、戯曲、紀行/書籍全般)
美術(絵画、漫画、写真、彫刻、映像、建築、工芸、陶芸、書道/展覧会、展示会)
音楽(歌、器楽演奏/コンサート)
演劇・映画(演劇、ダンス、バレエ、オペラ、能、狂言、文楽、歌舞伎/舞台)
その他(ファッション、デザイン、料理、トークライブ、パフォーミング・アーツなど)

※テーマは、芸術や文化以外にも、医療、保健、教育、科学、農、食、環境、国際、政治、経済など幅広く扱います。

**「美的発達段階」Abigail Housen, (1992, 2002)